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記事・解説

リニア談合で大成・鹿島に各2億5,000万円の罰金|最高裁が上告棄却、競争の有無をどう判断したか

公開日

リニア中央新幹線の駅新設工事を巡る談合事件で、大成建設と鹿島建設、両社の元幹部による上告が棄却されました。最高裁第三小法廷の決定は2026年9月14日付です。工事の難しさから「もともと競争がなかった」とする会社側の主張に対し、最高裁は各社の技術力、施工実績、専門業者との協力体制などを検討し、競争を実質的に制限したとの原審の結論を維持しました。(最高裁決定・令和5年(あ)第395号)

本記事は、裁判所の決定書、公正取引委員会の公表資料、企業の開示資料と報道を基に、判決の内容と争点を整理したものです。資料確認日:2026年10月5日。

大成・鹿島に各2億5,000万円の罰金――最高裁が上告を棄却

FNNの2026年9月15日報道によると、一、二審で言い渡された刑は、大成建設と鹿島建設にそれぞれ罰金2億5,000万円、元幹部2人にそれぞれ懲役1年6カ月、執行猶予3年です。最高裁の上告棄却により、これらの有罪判決が確定することになりました。(FNNの報道)

大成建設も9月15日の適時開示で、同社への罰金2億5,000万円と元顧問への執行猶予付き有罪判決が確定することを公表しています。最高裁が新たに罰金額を決めたということではなく、上告を退けたことで下級審の有罪判断が維持されたという関係です。(大成建設の開示資料)

対象は品川駅・名古屋駅の地下開削工事

問題となったのは、JR東海が指名競争見積方式で発注する品川駅と名古屋駅の新設工事です。公取委が違反事業者としたのは、大林組、清水建設、鹿島建設、大成建設の4社でした。(公取委の2020年12月22日発表)

最高裁決定によると、品川駅の工事は営業中の東海道新幹線の駅やビルの直下を開削し、地下駅を構築するものでした。名古屋駅でも、営業中の鉄道や駅施設の下で地下駅を造る必要がありました。列車の運行や既存構造物を支えながら進めるため、施工能力が事件の重要な争点になりました。

決定書が示す犯罪事実の要旨では、幹部らは2014年4月下旬頃から2015年8月下旬頃までの間に、受注予定者と、その予定者が受注できるような価格で見積りを行うことなどを合意したとされています。一部の会社の幹部が加わった時期は2015年1月下旬頃とされ、全社が同じ時期から参加したとの認定ではありません。(最高裁決定・1~2ページ)

見積書を出す前に、受注先と価格の情報を共有

決定書は、幹部らが会合で各社の受注目標や工区について情報交換し、特定の会社が各工区の受注を目指す方針を共有した経緯を記しています。その上で、積算資料や見積金額の情報を他社に伝え、各社が発注者に提出する見積金額を調整していました。

争われたのは、共同企業体(JV)を組んで施工すること自体ではありません。競争見積りの参加者が、提出前に受注先や価格を調整し、本来は独立して決めるべき事業活動を互いに拘束したことです。(最高裁決定・犯罪事実と情報交換の状況)

会社側の主張――難工事なので競争は存在しなかった

会社側は、工事が大規模で難しく、実際に施工できるのは、発注前からJR東海の依頼で技術的な検討を行っていた特定の会社に限られると主張しました。他社が見積書や技術提案書を提出したのは営業上の配慮などによる形式的な参加にすぎず、そもそも競争が存在しない以上、それを制限したともいえないという論旨です。

ここには、「複数社が見積りに参加した」という外形と、「複数社が現実に施工できた」という実態を分けて考える必要があるという問題がありました。最高裁も、単に見積書が複数あったことだけで判断したわけではありません。(最高裁決定・5~6ページ)

最高裁が重視したのは、客観的な施工能力

最高裁は、まず工事の内容や性質を踏まえ、各社に現実的な施工能力があったかを客観的な事実から検討すべきだとしました。判断で重視されたのは、主に次の事情です。

  • 各社が高い技術力と人的・物的資源を備え、営業中の鉄道に近接する工事や地下構造物の施工実績を持っていたこと。
  • 受注を目指す工区の技術を、類似性のある別の工区にも応用できたこと。
  • 独自に技術提案を検討し、専門業者やJV参加企業の技術・人員などを活用できる立場にあったこと。
  • 発注前の技術検討を担当していなかった会社が、分割後の重要な工事を実際に施工した事実があったこと。

こうした事情から、最高裁は4社それぞれに現実的な施工可能性を認めました。その状況で受注先や見積価格を調整すれば、競争が働く前提が失われ、4社の意思で受注者や価格をある程度左右できる状態になるとして、競争の実質的制限に当たると判断しました。(最高裁決定・6~8ページ)

本件から読み取れるのは、事前検討を担当した会社が有利だったことと、他社に施工能力がなく競争が成立しなかったことは、同じではないという点です。この整理は本件の事実認定に基づくもので、あらゆる難工事で同じ結論になるという意味ではありません。

罰金と課徴金は別――大成・鹿島が課徴金の対象外でも矛盾しない

2020年12月、公取委は4社に排除措置命令を出し、大林組と清水建設には合計43億2,170万円の課徴金納付命令を出しました。一方、鹿島建設と大成建設は対象工事を受注していなかったため、課徴金納付命令の対象にならなかったと明記しています。(公取委発表・対象事業者と注6)

今回の各2億5,000万円は刑事裁判の罰金です。公取委の行政処分である課徴金とは手続きも位置付けも異なります。「課徴金がないから違反はなかった」「4社すべてに43億円の罰金が科された」といった理解は正確ではありません。

また、排除措置命令を争う行政訴訟と、今回の刑事事件の上告審は別の手続きです。本記事で扱う最高裁決定をもって、関連するすべての訴訟が終結したと説明するものではありません。

再発防止で問われる、受注判断と競合他社との接触

大成建設は開示資料で、主張が認められなかったことへの遺憾の意を示す一方、最高裁の決定を厳粛に受け止め、法令遵守とコンプライアンス体制の強化に取り組むと表明しました。(大成建設の2026年9月15日開示)

本サイトでは、再発防止の実行を確認する上で、各社が受注する工区と見積価格を独立して決めているか、その根拠を記録しているかが重要だと考えます。競合他社との面談記録、見積りの変更履歴、社内承認の過程を確認できることは、外から見えにくい価格調整を検証する手掛かりになります。

高い施工技術が必要な工事でも、各社の技術力を生かした競争と、事前の受注調整を混同しないこと。本件の最高裁決定は、競争の有無を工事の難しさだけで判断せず、実際の施工能力と情報交換の内容から検討した事例です。

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